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「現象」「Q」とは

去年、ダンサーの東海林靖志さんと共に、宮澤賢治の「春と修羅・序」にインスパイアーされたダンス×音楽×文学のコラボレーション動画を作りました。
それをさらに発展させた、3人のダンサーと5人のミュージシャンでの特別なライブパフォーマンスを開催します。
タイトルは「現象Q」

賢治の「春と修羅・序」の冒頭のワード「わたくしという現象」から来ています。
100年前に、私を「存在」や「意識」ではなく「現象」と捉えたところがまず賢治のすごいところだと思うのです。
生命の本質を表す表現として「現象」は、確かにふさわしい。
それは近年の科学的知見でも明らかになってきていると思います。

以前他で書いた文章を引用します。
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私たちの身体はすべて細胞でできている。
細胞は分子で構成されている。
分子レベルで見ると私たちの身体は常に入れ替わり続けている。
入れ替わる速度は、例えば皮膚の表面なら数日程度、骨なら数年から10年くらいと細胞の部位によって異なるけれど、平均的に身体の90%以上の分子は1年で入れ替わっているらしい。
脳細胞ですら。
それでも維持される「私」の身体や意識とは一体何だろうか。

分子生物学者の福岡伸一氏はそれを「動的平衡」と呼んだ。
私たちの生命は絶え間なく動き、入れ替わりながらも全体としては同一性を保たれている。似たようなものは他にもたくさんある。
川には常に違う水が流れているけれど多摩川はずっと多摩川で、ある日急に江戸川になることはない。
ブランドや会社もそうだ。
社員が総入れ替えになったとしても、駅前のマックはモスバーガーにはならないし、AppleのMac BookもChrome Bookにはならない。
〜ロシアではマクドナルドが撤退した後にまるでモスバーガーのようなロゴのハンバーガーショップがオープンした。
中身はほぼマックなのに名前と見た目だけ変えて(別人のふりをして)営業を開始したニュースを気色悪く感じるのはその意味でも自然なことだ〜

流れ続け、変化し続ける動的な現象、それが生命の本質的な特徴のひとつだ。
賢治は100年前にそのことに気付いていたのだ。
ちなみに「春と修羅」初版本の出版は1924年。初版の発行部数は1000部だったがほとんど売れず本人が引き取ったらしい。
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そして現象QのQはQuantum(量子)からきています。
賢治が「春と修羅」を書いていた頃、ヨーロッパでは「量子力学」が産声を上げました。
そこでは「観測によって揺らぐ現実」が探られることになります。

遠く離れた詩人と科学者が、それぞれの感覚と言葉でこの世界の大きな謎を捉えていたのです。
そんなことをテーマに曲を沢山書いて、ダンサーとミュージシャン達とさらに作品として拵えているところです。
(来週には3日間リハーサルがあります。)
共演するダンサーは東海林靖志さん、堀川千夏さん、Yu-ki.☆さんの3名。
詳しい紹介はまたあらためますがそれぞれ素晴らしい個性と感性、表現力を持ったダンサーです。

是非お見逃し、お聴き逃しの無いよう、お早めにご予約くださいますようお願いします。
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2025.10.13 月・祝
Music×Dance×Reading
【現象Q】
生まれ、揺らぎ、消えても続く──「わたくしという現象」の物語。

開場 17:00/開演 17:30(終演19:00予定)

前売 ¥4,000 当日 ¥4,500 U-22 ¥3,000

会場:神楽坂 セッションハウス
東京都新宿区矢来町158/03-3266-0461
https://session-house.net/
*チケット代は当日精算です。

出演
東海林靖志 Dance
堀川千夏 Dance
Yu-ki.☆ Dance

飯田雅春 Bass/Composition
マツモニカ Harmonica
田中信正 Piano
羽生一子 Drums
行川さをり 朗読/Vocal

予約フォームhttps://forms.gle/rEo7PXJB6VBG2cNC7