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「 ISOLATED MOON – Session2」〜SYNCROOMでのマルチレコーディング

「〜 リモート小編成アンサンブルのための〜 ISOLATED MOON 」の別バージョン Session2を公開した。
メンバーは箏・十七弦箏 竹澤悦子さん、ヴィオラ 向島ゆり子さん、ヴォーカル 河波浩平さんとコントラバス 飯田でのカルテット編成。
ギターとサックスでのSession1とはまた違うサウンド。キーも変えている。
良かったら聴いてみてください。

さて、このリモートアンサンブルの収録に使ったシステムを紹介しようと思う。実際にはSession1と2で収録方法が若干異なっていて、Session2での方法が現時点での最善かと思うのでそれを採りあげる。

ZoomとSYNCROOM

映像はZoom(ビデオ会議システム)で繋ぎ、音声はYAMAHAのSYNCROOMを使用した。SYNCROOMはMAC、WINDOWS両方に対応しているリモート演奏用アプリケーションだ。
各自の環境に最低限必要なのは、パソコンと、マイクなどから音を取り込むオーディオインターフェイス、そして有線LAN(Wi-Fiだと安定しない)である。
まず、Zoomで繋いで、打合せや設定の確認をしてから、SYNCROOMのID、パスワードを伝え「ルーム」に入りそこで演奏する。
問題はその録音方法だ。
(これから同様の事を試みる方のためにうまくいかなかった方法も書いておこうと思う)

Session1を始める前にいろいろとテストしている段階では、SYNCROOMとLOGICを同時に起ち上げて、SYNCROOMでリモート演奏しながらLOGICで録音ができたのだが、実際に複数メンバーで接続すると安定性に問題が生じ、ノイズが出てNG。
1台のオーディオインターフェイスを複数のアプリで同時に共有することに無理があるのだと思う。
(それを受けて、最初に接続するZoomでも、オーディオインターフェイスを使用せず、PCデフォルトのマイクとスピーカーを使用するようにした。その方がSYNCROOMでのトラブルが少ない。)

収録方法はメンバーの環境にも依存する。
Session1の時は、一部の楽器についてはSYNCROOMに送るマイクの音を分岐させ、別のレコーダーにも送って録音した。
それ以外は各自のマイクはSYNCROOMへの送信にだけ使用し、ミックスダウンに使用した音は動画撮影用のカメラの音声だ。
これだとやはりせっかくのマイクの音が活かせなくてもったいないし、ノイズ除去にも結構苦労した。

SYNCROOMでのマルチレコーディング

Session2の本番前に色々と調べているうちに、SYNCROOMでマルチトラックレコーディングが出来る事がわかった。
DAW(LOGICなどの音楽アプリ)にVSTインストゥルメントとしてSYNCROOMを起ち上げることで、DAW内でSYNCROOMの各メンバーの音声を別トラックで受信出来るのだ。これがわかったときは驚いた。
ただ、ぼくがメインで使っているLOGICはVSTに対応していないので、普段マスタリング用に使っているStudioONEでレコーディングすることにした。(ABLETON LIVEもVSTに対応しているので使えるかもしれないが未検証)

設定はちょっと面倒だけど下記の手順だ。

1.自分の音を録音するためのオーディオトラックを作る
2.インサートに「syncroom_vst_bridge」を差す(自動的にSYNCROOMが「VSTモード」で起動する)
3.自分のパートのトラックを録音待機状態にする(これでSYNCROOMに音が送られるはず)
4.SYNCROOMからの受信用にインストゥルメントトラックを作りる。インストゥルメントに「syncroom_vst_bridge_sub_multiout」を選ぶ
5.インストゥルメントの出力設定で「Member1 OUT〜Member4 OUT」の必要なパートにチェックを入れて有効にする(SYNCROOMのルーム連結先の音も取り込めるようだ)
6.各メンバー用のオーディオトラックを必要な数作成する。入力で「Syncroom Member 1 OUT」を選択すればMember1の信号が抽出される。(必要に応じて複数作成する)
7.各メンバーのトラックの録音待機ボタンをONにする。


これでSYNCROOMでのセッションをマルチトラックでレコーディングすることが出来る。

だけど今回、この音は本番ミックスには使用せず、あくまでバックアップ程度とした。
インターネットを経由した音なので圧縮されているし、回線の状況によってノイズが乗ることもありえるからだ。
ミックスに使用する音は各自のPCで収録した非圧縮のものだ。
今回、他の3人のメンバーが全員LOGICユーザだったので下記の方法で収録してもらった。


1.オーディオトラックを作成し、入力に使用するマイクのチャンネルを設定2.マスター(Stereo Out)の Audio FXに「Audio Unit > YAMAHA > syncroom_au_bridge」をインサート(これで自動的にSYNCROOMがVSTモードで起ち上がる)
3.Logicの「環境設定>オーディオ>一般タブ の中にある【ソフトウェアモニタリング】にチェックを入れる
4.トラックのRボタン、Iボタンをオンにする(これでマイク入力がSYNCROOMに送られる)


これでLOGIC上でSYNCROOMを使用することが出来る。あとは録音ボタンを押すだけ。


という方法で収録したのが今回の「 ISOLATED MOON – Session2」だ。今のところこれが最善の方法ではないかと思う。(もちろん上記以外に動画をそれぞれ撮影してもらっている。)


あと細かい注意点としてあげられるのは、
・本番を始める前に、全員の録音ボタン、録画ボタンが押されているか確認する。
・録音が回った後、全員が順次、手を打つなどのアタック音を動画に写るようにして出す。(編集の時にそれを基準にタイミングを合わせるため)
・セッティングや準備に手間がかかるので時間には余裕を持つ。
というところだろうか。

ご参考になれば幸いである。